「死なないでね」と言われて

 お盆を数日後に控えた盛夏の頃、妻の祖父が亡くなりました。私の子どもたちからすると曾祖父にあたります。九十一歳と高齢ではありましたが、その日の朝まで畑仕事をしていた元気な方でした。通夜、葬儀を勤め、家族みんなで毎週の壇勤めにお参りしました。

 葬儀から二週間ほど経ったある夜、眠りに入る間際に、五歳の長男が私に何かを囁きました。はっきりと聞こえなかったため、聞き直すと「死なないでね」と言うのです。私は涙が溢れてきました。その翌日にはお風呂で「ながーく生きてね」と言ってくれました。おそらく長男はテレビ等で「死ぬ」ということを知っていたと思います。ですが頻繁に会っていた人の死を経験するのは初めてのことでした。毎週の壇勤めで、いつもそこにいた曾祖父がいない様子に、死ぬということは、もう二度とおしゃべりをすることも、遊ぶことも、会うこともできなくなることなのだと理解したのでしょう。

 幼い子どもにとって親がいなくなるということはどれほど不安なことでしょうか。ですが長男は、私が必ず死を迎える人だと気付いたのです。その長男の気持ちを想像し、「死にたくない」と心の底から思いました。

 三歳の二男は、葬儀の数日後、曾祖父が話題になっているときに「楽しかったね」と言うので、何のことか聞くと、死の数週間前に畑でいっしょに芋掘りをしたことを思い出していたのです。

 

 曾祖父の死、そして長男と二男の言葉から気付かされたことがあります。私は死に向かって生きる者であり、おそらくは子どもたちに見送られ、思い出の中の存在となること。その子どもたちに私は何を伝えてゆけるでしょうか。必ず別れは訪れるけれど、できる限りの愛情を持って向き合おうと改めて決心しました。死とは、失うだけではなく、どんなことを大切に生きてゆくのかを教え、与えることでもあったのです。

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